ハービー・ピーカーという男 最終回
・・・ちなみに、このシリーズは、一番下までスクロールして
初回から読んだほうがよいですよ・・・
(2004.11.22追記)
うかうかしていたら、『アメリカン・スプレンダー』の初日になってしまった。
もうハービー・ピーカーのことを忘れてしまった人は、
一度、ふりだしに戻ってみてください。
http://yasudayuko.way-nifty.com/clover/2004/05/post_4.html
さて、常に孤独なハービーに、
めでたく「モタモタ君」という友人ができたその夜、
ハービー一家は、温泉に初挑戦。
意外にも素直に「日本式温泉」を堪能した様子のハービー。
そして、妻のジョイスと養女のダニエールは、私と一緒に温泉へ。
暑がりのダニエールが、アフターサウナ用の水風呂で長湯していたことを除けば
ジョイスの入浴作法も、堂に入ったもので、ほかのお客さんも
「あら、ガイジンがはいってるわ」などと好奇の目を投げかけてくることはなかった。
しめくくりは、ホテルのバーでカラオケを堪能。
アメリカン・ガールのダニエールが歌う、
アブリル・ラヴィーンとか、スパイス・ガールズとかの、
「日本人には早口すぎて歌えない英語の歌」は、
聴いてるだけでザッツ・エンターテインメント。
「温泉にカラオケ」
“気難しくて、芸術肌ですから・・・”と配給会社の担当者から
「要注意人物」の太鼓判を押されていたハービーだが、
案外、オーソドックスな遊びを、文句を言わず楽しんでくれているので、
こちらもホっとする。
そして次の日、
ハービー一家の箱根旅行に、早くもおしまいの日がやってきた。
お風呂好きの私が、朝風呂に行くと
のれんの向こうに、浴衣姿のダニエールが。
「おや、早起きだね」
「うん、ちょっとね。昨日は、ハービーとジョイスはベッドで寝て
私はこあがりになってる和室で寝たの。楽しかったんだぁ」
とゴキゲン。
そしてまた、ダニエールは朝から水風呂を長湯して、
おたがい朝食までの時間を過ごしに、いったん部屋へ戻る。
すると、5分後・・・
「ピンポン」
「あらま?」
「ちょっと散歩に行かない?」とダニエール。
ロックのバンドの名前がプリントされた黒いTシャツ、
頭に白いペイズリーのバンダナを巻いたダニエールは、
完璧な金髪のロングヘアに白い肌。んでもって、ちょっと小太り。
うーん、まるでヘビメタ・バンドのドラマーみたいだな。
私たちは、
ダニエールが、ハワイにいる彼氏を、日本に来る前に親同伴で訪ね、
そこで別れ話になってしまったことなどを話しながら、
しばらく、強羅の森をふらふらと散歩した。
そろそろ帰ろうか、という私にダニエールは首を振る。
「なんかさ、ケンアクなんだよね、あの二人」
なるほど、部屋ではハービーとジョイスが夫婦喧嘩をおっぱじめているらしく、
それでダニエールは緊急避難してきたというわけか。
そこで、
ダニエールとハワイの灼けたボーイフレンドとの「メール交換のみの交際」という
グローバルな関係を、さらに詳しく聞きながら10分ほど歩いた。
普段はメールだけで想いを伝え合っていたものの、
実際に会って見たら、好きという気持ちが強すぎて、
どういうわけか別れ話に発展してしまう。
若いときによくありがちな恋愛ストーリーで、私にとっては楽しい話だった。
しかし、よくよく聞いてみれば、相手の男は、他にも全世界にメル友(女)がいるらしく、
「私たちは恋人同士」と思っているのはダニエールだけ、という、
これもまた若いころによくありがちな話にも思えた。
が、これは、けな気なダニエールには黙っておいた。
「そろそろいいかな?」と言いながら、部屋へ戻ると
たしかにお父さんとお母さんは、ちょっと雰囲気がよどんでいる感じ。
そ知らぬふりして、チェックアウトし、強羅駅へと向かう。
ホテルのエントランス前は、いきなりものすごい急坂になっていて、
昨日の午後、ダニエールと配給会社の若者以外の
運動不足の大人三人組は、ひいこら言いながら登ってきたっけ。
当然、帰りは長い下り坂。
今回は、ハービーとジョイスが先頭を歩いていく。
そのはるか後ろから、ダニエールと私と配給会社の担当くんがついて歩く。
しばらく歩いていると、
なんとなく、すごく、さりげなく、
前を行くおじじが、ふわりとおばばと手をつないだ。
「きゃ~、ステキな仲直り法!」と喜ぶ私。
「うげげげげ、やめてぐれぇ」。嫌がるダニエールも、実は嬉しそう。
「いいっすねぇ」。とりあえず、場の雰囲気に合わせる配給くん。
こうやって、「ちょっと世間では扱いにくいふたり」は、
わめきあっては、いたわって、
20年も仲良くやってきたのだろうな。
駅に到着すると、改札口の前で、ハービーがぴたりと足を止めた。
かまわず、ずんずんと先に行くジョイス。
またしても突っ立ったまま頭を抱えるハービー。
今度は何だ?
ハービー 「アイスが食べたい」
ジョイス 「買えばいいじゃない」
するとハービー、大きくひとつため息をつき、
次に静かに怒りだした。
今まで抑えていた感情が、
めらめらと燃え上がってきているようだった。
取材中にジョイスが全部勝手に答えてしまうことや、
自分が行きたいところとは逆の場所にジョイスが行きたがることや、
自分は仕事で来ているのに、ジョイスのお買い物が優先されることや、
てんぷらはあんまり好きじゃないのに、
ジョイスが食べたいからてんぷら屋に行ったことや・・・。
黙って仕切られているのかとおもいきや、
「案外、ストレスが溜まっていたのね」とこちらが驚くくらい
激しく感情を爆発させて、ハービーはこう叫んだ。
「金を持っていないんだよ!」
おいおい、オッサン、アイスは250円でっせ。
なみだ目で言わなくても・・・。
「こんなことは、慣れっこ」と言わんばかりに
さっさと改札を入ってしまうジョイス。
しかたがないので、私はこのオトナコドモのオッサンに
ソフトクリームを買ってあげた。
「バニラとあじさい味のどっちがいい?」と聞くと、
しばらく真剣に考え込んでから、
「あじさい味!」
と嬉しそうに叫んでいた。
隣で黙って一部始終を見ていたダニエールも、
めずらしい「あじさい味」のおこぼれにあずかり、
とても満足そうだった。
500円くらいの出費で、こんなに喜んでもらえるなんて、
「やっぱりこどもたちってカワイイわね」、なんて思ってみたが、
よく考えたら、ひとりは大人だった。
楽しい旅でよかったね。ハービーおじちゃん。
■■■ これが、本物のハービー・ピーカー ■■■
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XXX ジェリー・ビーンズ好きのハービーの同僚、トビー・ラドロフも いい味出してるXXX
http://www.amesp.jp/
ハービーのスプレンディッドな毎日・・・
『アメリカン・スプレンダー』
ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ/梅田ガーデンシネマ(大阪)で公開中

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